急落する円、利上げ観測は再燃？—高市新体制の誤算
10月9日の東京外国為替市場で円相場は一時1ドル＝153円台へ下落し、およそ8カ月ぶりの安値圏に沈みました。財政拡大と金融緩和継続を掲げる高市早苗・自民党新総裁の誕生で、日銀の利上げ後ずれ観測が広がったことが背景です。ただ、円安は輸入インフレを強めるため、結果的に日銀の早期利上げ観測を再点火させる逆説も見え始めています。市場の見方と政策当局の選択肢を、投資家目線で整理します。
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【Point！】｜要点
- 円は153円台の8カ月ぶり安値、週初から下落幅は3％超。
- 「緩和長期化」思惑で10月会合の利上げ確率は一時約25％へ低下。
- ただし円安進行が物価を押し上げ、利上げ圧力を高める可能性。
- 高市政権の財政拡大は当面の景気支えだが、為替には円安バイアス。
※データはいずれも10月9日（木）時点。詳細は出典リンク参照。
市場で何が起きたか──「153円ショック」が示すもの
円は10月9日に一時153.2円前後まで下落し、年初来安値圏に接近。今週の円は主要通貨で最大の下落率となり、ドル指数の底堅さと相まって「円売り優勢」の地合いが鮮明です。背景には、高市新総裁の下で財政出動と金融緩和の継続が意識され、日銀の利上げ時期が後ずれするとの見方が広がったことがあります。実際、短期金利先物やOISの織り込みでは、10月29–30日の会合での利上げ確率が約25％に低下したとの推計が報じられています。
逆説｜円安が「利上げ」を呼び込む可能性
為替自体は日銀の直接目標ではないものの、円安→輸入物価上昇→コアCPIの上振れという経路は政策判断に無視できません。円が150円を大きく超える水準では、生活必需品やエネルギーのコスト増が可視化し、実質所得の目減りや家計マインド悪化を通じて政治的プレッシャーも高まります。結果として、市場は「緩和継続期待で円安が進む→物価リスクが増幅→むしろ利上げの大義が強まる」という逆説の連鎖を意識し始めました。
キーパーソンの発言とシグナル
本田悦朗・元内閣官房参与（高市氏ブレーン）は今週、「10月の利上げはさすがに難しいが、12月なら25bpの引き上げも選択肢」との見解を示し、「150円を超えるとやや行き過ぎ」とも発言。市場の円安観測に一定の歯止めシグナルを送る一方、足元の為替水準には違和感をにじませました。
投資家が、今すぐ確認すべき3点
- イベント日程の再確認：10月29–30日の日銀会合。声明文と記者会見の「物価見通し」と「為替の評価」を要チェック。
- 織り込みの変化：利上げ確率が25％近辺から再浮上する兆しが出れば、円ショートの巻き戻しに警戒。
- 政策ミックス：補正予算の規模・中身次第で需給ギャップや期待インフレに上振れ圧力。財政×金融の組合せが為替に与える方向性を見極める。
本日のスナップショット—10/9 東京
・USD/JPY：153円台（8カ月ぶり安値圏）
・OIS：10月会合の利上げ確率 約25％（直前は約68％）
・論点：円安がコアCPIを押し上げ、逆説的に利上げ思惑を強める可能性
出典：ロイター通信
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- スプレッド重視のFX口座：短期売買のコストを抑制
- マクロ・政策速報に強いニュース配信：会合・要人発言の即時チェック
- 自動アラート：USD/JPYが150・153・155円に到達で通知
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よくある質問—今、円買いに転じるべき？
短期：10月会合までの要人発言や米金利次第で乱高下リスクが高い局面。ストップ設定とポジションサイズ管理を最優先に。
中期：財政の拡張度合いと賃上げ動向、原油高が続くかで実質金利見通しが変わります。
【Point！】
イベントドリブン→データドリブンへの移行点を見極めましょう。
【Check Point！】｜円安の「副作用」が政策の舵を切り替えるか
高市新体制で「緩和長期化」の思惑が円安を深めましたが、その副作用である物価上振れが、逆に日銀へ早期利上げの正当性を与えつつあります。10月会合の織り込みは低下したままでも、円安のスピード次第では復活し得る──この二段構えのシナリオが当面の基本線です。
出典
- 円が8カ月ぶり安値圏／週初来で3％超安の報道｜出典：Reuters「Steady dollar headed for best week in a year as yen struggles」（2025/10/09）。
- OIS利上げ確率が約25％へ低下・153.22円まで下落｜出典：Bloomberg「Yen's Rapid Fall Complicates Takaichi Hopes for Slower BOJ Hikes」（2025/10/09）。
- 高市ブレーン・本田氏「10月利上げは難しい／150円超はやや行き過ぎ」｜出典：Bloomberg「Takaichi Adviser Says October Too Early for BOJ Rate Hike」（2025/10/06）。
- 弱い円は景気にプラス／財政で輸入物価を相殺し得る｜出典：Reuters「Adviser to Takaichi's policy circle says weak yen is good for economy」（2025/10/09）。
- 政権の発言が日銀独立性と市場心理に与える影響｜出典：Reuters「Takaichi's jab at BOJ independence may face political reality check」（2025/10/09）。
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