植田日銀総裁-関税の影響があっても経済は持ちこたえる

日本銀行の植田和男総裁は6月3日に都内で講演し、アメリカの関税政策の影響があっても、日本経済はしっかり持ちこたえ、賃金と物価が少しずつ一緒に上がっていく流れは続くとの見方を示しました。
植田総裁は、「関税による影響は予想より大きいが、日本経済には成長の芽があり、2%の物価安定目標に向けて順調に進んでいる」と語りました。
利上げへの姿勢も変わらず
現在、日銀は物価が安定して上昇するかを重視して政策判断をしていますが、物価の上昇が一時的に弱まる局面があっても、中長期的には目標の2%に近づいていくという見通しに変わりはないとの述べました。
そのため、物価が予想通りに上がれば、利上げ(金融引き締め)によって緩和を調整する方針も変えない考えを改めて示しました。
市場の利上げ期待はやや後退
米国の「トランプ関税」による世界経済の減速懸念がある中で、日銀は5月1日の会合で金融政策の現状維持を決定。これにより、市場では「早期の利上げは難しいのではないか」との見方が広がっています。
ただし植田総裁は、「関税の影響で経済が一時的に落ち込んでも、成長と物価・賃金の上昇は続く」と繰り返し強調し、今後の利上げに前向きな姿勢をにじませました。

今後の国債買い入れは?
日銀は、6月16〜17日の会合で、現在進めている国債買い入れの減額計画を見直す予定です。現在は、2026年1〜3月にかけて買い入れ額を減らしていく計画になっています。
植田総裁は、「来年4月以降の国債買い入れは、さらに減らすべきだという声が多かった」と述べ、市場の声を踏まえて対応を検討するとしています。ただし、「国債市場の機能はまだ十分に回復していない」として、柔軟な対応も必要だという意見が多かったことも紹介しました。