エヌビディア2025年度第3四半期決算【徹底解説】|BlackwellとH20規制

2025年12月を期末とするエヌビディア(NVIDIA, NASDAQ: NVDA)の2025年度第3四半期決算が発表されました。 売上高は467億ドル(前期比+6%、前年同期比+56%)、調整後EPS(非GAAP)は1.05ドルと、いずれも市場予想を上回る内容です。
特に注目されるのは、次世代GPUアーキテクチャ「Blackwell」の立ち上がりと、 中国向けAIチップH20の販売ゼロという強い逆風を受けながらも、高い成長と粗利益率72%台を維持している点です。
本記事では、公式リリースおよび日本語メディアの情報をもとに、 NVDAの決算内容を「数字」「事業別」「地政学リスク」「株主還元」「今後のシナリオ」の5つの軸から分解し、 個人投資家が押さえておきたいポイントをわかりやすく整理します。
「AIブームは続くのか?」「NVDA株はまだ買えるのか?」と悩んでいる方は、 決算の中身を正しく理解することで、短期の値動きに振り回されず、より納得度の高い投資判断ができるはずです。
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- 1. 2025年度第3四半期決算ハイライト|売上・利益・ガイダンスの要点
- 1.1. 主要KPI(GAAP・非GAAP)
- 1.2. Q4(2025年度第4四半期)ガイダンス
- 2. 売上構造|データセンターが約9割、ゲームも高成長を維持
- 2.1. セグメント別売上(Q3 FY25)
- 3. Blackwell Data Centerが17%増—AIインフラ投資ラッシュの中心に
- 3.1.1. Backwellを軸にした動き
- 4. 中国H20販売ゼロでも成長継続—規制リスクをどう見るか
- 4.1. 規制リスクは「売上を抑えるブレーキ」か、「価格交渉力の源泉」か
- 5. 株主還元|600億ドル増額の自社株買いと配当
- 5.1.1. NVDAの株主還元・成長投資
- 5.1.2. 考えられるリスク
- 6. 今後の成長シナリオ—AIブーム「第2章」にどう備えるか
- 6.1. ベースシナリオ:AIデータセンター投資の継続
- 6.2. 強気シナリオ:AI PC・ロボティクス・産業AIが本格立ち上がり
- 6.3. リスクシナリオ:規制強化・競合台頭・顧客の内製化
- 7. 【Check List!】|NVDA投資を検討する個人投資家
- 7.1. チェックしたい主な論点
- 7.1.1. チェックすべきPoint!
- 7.1.2. 【厳選】NVIDAなど米国株に投資するなら取引環境が重要
- 8. 【Check Point!】AIインフラ「中核」の地位は維持—リスクは地政学とサイクル
2025年度第3四半期決算ハイライト|売上・利益・ガイダンスの要点
まずは、今回の決算の「数字」をコンパクトに整理します。
主要KPI(GAAP・非GAAP)
| 項目 | 数値・内容 |
|---|---|
| 売上高 | 467億ドル(前期比+6%、前年同期比+56%) |
| GAAP粗利益率 | 72.4% |
| 非GAAP粗利益率 | 72.7%(H20在庫リリース除くと72.3%) |
| GAAP営業利益 | 284億ドル(前年同期比+53%) |
| GAAP純利益 | 264億ドル(前年同期比+59%) |
| GAAP希薄化後EPS | 1.08ドル(前期比+42%、前年同期比+61%) |
| 非GAAP希薄化後EPS | 1.05ドル(前期比+30%、前年同期比+54%) |
なお、H20関連の1億8,000万ドルの引当金戻入と税効果を除いた非GAAP EPSは1.04ドルであり、 一時要因を除いても高い収益性を維持していることがわかります。
Q4(2025年度第4四半期)ガイダンス
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 売上高見通し | 540億ドル ±2% |
| GAAP粗利益率 | 73.3% ±0.5pt |
| 非GAAP粗利益率 | 73.5% ±0.5pt |
| 営業費用 | GAAP:約59億ドル/非GAAP:約42億ドル |
| 税率(GAAP・非GAAP) | 16.5% ±1% |
特筆すべきは、このQ4見通しに中国向けH20出荷を一切織り込んでいない点です。 それでもなお売上540億ドルを見込んでおり、AIインフラ需要の強さが改めて確認された形です。
売上構造|データセンターが約9割、ゲームも高成長を維持
エヌビディアの成長ドライバーは言うまでもなくデータセンター事業ですが、 今回の決算ではその他セグメントも堅調でした。主な内訳は以下のとおりです。
セグメント別売上(Q3 FY25)
| セグメント | 売上高 | 前期比 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| データセンター | 411億ドル | +5% | +56% |
| ゲーム | 43億ドル | +14% | +49% |
| プロフェッショナル ビジュアライゼーション | 6.01億ドル | +18% | +32% |
| 自動車・ロボティクス | 5.86億ドル | +3% | +69% |
売上全体に占めるデータセンターの構成比はおよそ88%に達しており、 「AIインフラ企業」としての性格がさらに鮮明になっています。
一方、ゲーム向けGPUもRTX 5060(Blackwell世代)の投入や、 DLSS 4対応タイトルの拡大、クラウドゲームサービス「GeForce NOW」の強化により、 単なる「PCゲーム向け」からAI PC・生成AIワークロードもこなすマルチ用途GPUへと進化を続けています。
自動車・ロボティクス事業も、DRIVE AGX ThorやJetson AGX Thorを軸に、 自動運転・産業ロボット・物流などへのAI搭載を加速しており、 「ポストGPUゲーム」の次の成長のタネとして存在感が増しています。
Blackwell Data Centerが17%増—AIインフラ投資ラッシュの中心に
今回の決算の最大のトピックは、次世代GPUアーキテクチャであるBlackwellの立ち上がりです。 エヌビディアは、「Blackwell Data Centerの売上は前期比+17%」と明らかにしており、 既にHopper世代からの世代交代が本格化していることがわかります。
CEOのジェンスン・フアン氏は、Blackwellを「世界が待ち望んでいたAIプラットフォーム」と表現し、 ラックスケールのNVIDIA NVLinkコンピューティングは革命的であり、次世代のトレーニングと推論の性能を桁違いに引き上げる
とコメントしています。これは単なるGPUの世代交代ではなく、データセンター全体を「AIファクトリー」へと作り替えるプラットフォーム戦略だと言えます。
実際に、エヌビディアはBlackwellを軸に以下のような動きを加速しています。
Backwellを軸にした動き
- Disney、TSMC、SAPなどによるBlackwell GPUサーバー採用
- ヨーロッパ各国と連携した産業向けAIクラウド構築
- 世界各地でのAIスーパーコンピュータ(JUPITER、FugakuNEXTなど)への採用
- MLPerfベンチマークでのトレーニング性能トップクラスの結果
- OpenAIのオープンモデル「gpt-oss」をBlackwellラックスケールで高速推論
こうした動きから、Blackwellは単に「H100の後継チップ」ではなく、 「AI時代の標準インフラ」を狙った長期プラットフォームであることが読み取れます。 その意味で、Blackwellの立ち上がり具合を追うことは、NVDAの中長期成長を占ううえで最重要指標の1つと言えるでしょう。
また、エヌビディアは大規模言語モデルの事前学習向けに4ビット精度フォーマット「NVFP4」を導入し、 高性能GPUと専用フォーマットを組み合わせることで、トレーニング・推論の両面で効率を高めようとしています。 ハード・ソフト・開発ツールを垂直統合した「エコシステム戦略」が、競合他社との最大の差別化要因になっています。
中国H20販売ゼロでも成長継続—規制リスクをどう見るか
今回の決算で投資家が特に注目したのが、中国市場向けGPU「H20」の動向です。 エヌビディアは第3四半期について、「中国を拠点とする顧客へのH20売上はゼロ」であったと明言しています。
H20は本来、中国向けに規制に準拠した形で設計されたAIチップですが、 2025年4月の米国政府による規制強化で輸出ライセンスが必要となり、中国向け出荷は事実上ストップ。 その結果、同社はH20在庫に対して引当金を積んでいました。
しかし第3四半期には、 約6.5億ドルの「中国以外の顧客」へのH20販売が実現し、 そのうち1.8億ドルが引当金の戻入(リリース)として利益を押し上げています。
規制リスクは「売上を抑えるブレーキ」か、「価格交渉力の源泉」か
一見すると、中国向け売上ゼロはネガティブ要因に見えます。しかし今回の決算を見る限り、 規制を織り込んでもなお、同社は高い成長率と粗利益率を維持しており、 「供給制約+高い需要」がむしろ価格交渉力を高めている側面もあります。
もちろん、地政学リスクが完全に無視できるわけではありません。 今後も追加規制・輸出管理強化の可能性は残っており、NVDAへの投資には 「高成長と同時に、政策リスクを抱える銘柄」という認識が欠かせません。
ただし、今回の決算で確認できたのは、 「中国向けがゼロでも事業全体の成長エンジンは十分に強い」という事実です。 エヌビディア自身も、Q4ガイダンスに中国向けH20を一切織り込まない前提で強気の見通しを出しており、 需要は北米・欧州・中東など他地域に十分存在することを示しています。
株主還元|600億ドル増額の自社株買いと配当
エヌビディアは、成長投資と同時に株主還元も積極的に行っています。
NVDAの株主還元・成長投資
- 2025年度上期に243億ドルを自社株買い+配当の形で株主に還元
- 第2四半期末時点で、既存の自社株買い枠の残高は147億ドル
- 2025年8月26日、取締役会が追加で600億ドルの自社株買い枠を承認(期限なし)
- 2025年10月2日に、1株あたり0.01ドルの四半期配当を支払い予定(権利確定日は2025年9月11日)
配当額は象徴的な水準に留まる一方、自社株買いの規模は極めて大きく、 時価総額数兆ドル企業でありながら、なお1桁台後半〜2桁台前半の還元利回りを狙える可能性があります(株価水準に依存)。 もちろん、現在のNVDA株は「高成長+高バリュエーション」が織り込まれており、 決算が少しでも期待を下回ると株価が大きく振れる可能性があります。 したがって、投資家としては ・売上成長率の鈍化や、以下のリスクを考えながら、ポジションサイズを調整することが重要です。
考えられるリスク
・データセンター需要のピークアウト
・地政学リスクの顕在化 といったシナリオ
今後の成長シナリオ—AIブーム「第2章」にどう備えるか
今回の決算とQ4ガイダンスから読み取れるのは、NVDAがなお「AI投資サイクルの中心」に位置しているという事実です。 ただし、ここから先のストーリーは単純な「GPU販売数×単価」の世界ではなくなっていきます。
ベースシナリオ:AIデータセンター投資の継続
クラウド大手・ハイパースケーラー・国・大企業などの間で、 生成AIやLLMへの投資は依然として拡大傾向にあります。 Blackwell世代の本格展開により、2026年度以降もデータセンター売上が高成長を維持するのがベースラインと言えます。
強気シナリオ:AI PC・ロボティクス・産業AIが本格立ち上がり
さらに強気なシナリオとしては、 AI PC(RTX搭載PC)・産業ロボット・自動運転・デジタルツインなど、 「クラウドの外」にある新市場でのGPU需要が急拡大するパターンです。 すでにシーメンスとの連携やOmniverse関連ツールの整備が進んでおり、 「AIがソフトウェアだけでなく物理空間にも浸透する」流れが始まりつつあります。
リスクシナリオ:規制強化・競合台頭・顧客の内製化
一方で、投資家が見逃せないリスクも存在します。
- 米中対立の長期化による輸出規制強化
- AMDや各国半導体メーカーによるGPU・アクセラレータの追い上げ
- 大手クラウド事業者によるAIチップの内製化(自社GPU/ASIC)
- AI投資サイクルの一時的な「消化期間」(設備投資のスローダウン)
つまりNVDAは、「超高収益・高成長の一方で、政策と競争環境の変化に強く影響される銘柄」であることを理解したうえで、 長期視点で付き合う必要があります。
【Check List!】|NVDA投資を検討する個人投資家
最後に、NVDAへの投資を検討する際にチェックしておきたいポイントを簡単に整理します。 ここではあくまで一般的な情報提供であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
チェックしたい主な論点
チェックすべきPoint!
- 売上成長率:データセンター売上の前年同期比成長がどの水準まで維持できるか
- 粗利益率:H20など一時要因を除いたベースの粗利率が70%台半ばを維持できるか
- Blackwellの立ち上がり:出荷状況・MLPerf・顧客事例など
- 中国・規制リスク:H20の扱い、輸出管理、地政学ニュース
- 株主還元:自社株買い規模・発行済株式数の減少ペース
これらを四半期ごとにフォローしていくことで、短期の株価変動に惑わされず、 企業の「本当の進捗」に基づいた判断がしやすくなります。
【厳選】NVIDAなど米国株に投資するなら取引環境が重要
エヌビディアのような米国大型テック株に投資する場合、 「手数料」「為替スプレッド」「情報ツール」の3点は必ず比較しておきたいポイントです。
- 米国株の売買手数料が低水準か
- 米ドル建ての入出金や為替手数料がわかりやすいか
- 決算情報・ニュース・スクリーニングツールが充実しているか
これから口座開設を検討している方は、米国株に強いネット証券を比較してから選ぶのがおすすめです。
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※AD|上記リンクは一般的な情報提供であり、特定の金融商品・投資行動を推奨するものではありません。
【Check Point!】AIインフラ「中核」の地位は維持—リスクは地政学とサイクル
エヌビディアの2025年度第3四半期決算は、 「売上・利益ともに市場予想を上回りつつ、中国向けH20ゼロでも高成長を維持した」 という点で、改めて同社のビジネスモデルの強さを示す内容となりました。
一方で、株価はすでにAIブームと高成長をかなり織り込んでおり、 今後は決算ごとに「期待とのギャップ」で激しく動くフェーズに入っていくことが想定されます。 投資家としては、 ①数字のトレンド(売上・粗利・EPS)と ②地政学・政策・競争環境の両方を丁寧にウォッチすることが欠かせません。
NVDAは、AI時代の「コアインフラ銘柄」であると同時に、 その成長期待ゆえにボラティリティも高い銘柄です。 本記事の内容を参考にしつつ、ご自身のリスク許容度や投資期間に合わせて、 慎重に判断していきましょう。
※本記事は、公開情報に基づく一般的な解説であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。 投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。
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