JPXが暗号資産トレジャリー企業を規制検討—メタプラネットなどに波及

日本取引所グループ(JPX)が、いわゆる「暗号資産(仮想通貨)トレジャリー」事業を中核に据える上場企業への対応を見直そうとしています。ビットコインを大量に保有し、その値動きが株価や企業価値を大きく左右する新しいタイプの企業が、個人投資家に想定以上のリスクをもたらしているのではないか──そんな懸念が急速に強まっているためです。
本記事では、JPXが検討している規制の方向性、メタプラネットやコンヴァノなど代表的な暗号資産トレジャリー企業のビジネスモデルと株価動向、そして個人投資家がとるべき具体的なリスク管理策まで、最新情報をもとに徹底解説します。

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目次

暗号資産トレジャリー企業とは?—JPXが注目する新しい上場企業の姿

まず押さえておきたいのが、「暗号資産トレジャリー企業」とは何かという点です。ここで言うトレジャリー企業とは、自社の本業以上に、ビットコインなどの暗号資産を大量に保有・運用することをビジネス戦略の中心に据えた上場企業を指します。

海外では米ソフトウエア企業のMicroStrategy(日本語記事では「ストラテジー」と表記されることが多い)が代表例で、約660億ドル相当のビットコインを保有し、株価もビットコイン相場と連動して大きく変動してきました。しかし2025年夏以降は株価が年初来高値から半値近くまで下落し、個人投資家に大きな含み損をもたらしたことが懸念材料となっています。

このモデルを参考に、日本でもビットコイン保有を前面に打ち出す企業が登場しました。その代表が、もともとホテル事業を営んでいたメタプラネットと、ネイルサロン運営から暗号資産トレジャリー戦略への転換を打ち出したコンヴァノです。

暗号資産トレジャリー企業は、株価とビットコイン相場が強く連動するという特徴があります。ビットコインが上昇相場の時には株価も急騰しやすい一方で、相場が反転した場合の下落幅も大きくなりやすく、JPXはこの点を投資家保護の観点から問題視し始めています。

JPXが暗号資産トレジャリー企業の拡大を「要注意」と見る理由

株価急落と個人投資家の損失懸念

事情に詳しい関係者によると、JPXは暗号資産トレジャリー企業の拡大を抑制するため、裏口上場につながりかねない不適切な合併のルール厳格化や、新たな監査義務の導入といった選択肢を検討しているとされています。まだ具体的な制度案が固まっているわけではありませんが、方向性としては「急速な拡大にブレーキをかける」イメージです。

背景には、関連企業の株価急落と個人投資家の損失拡大があります。メタプラネット株は年初から約420%も急騰した後、6月中旬に付けた上場来高値(1930円)から75%以上下落しました。コンヴァノも、最大2万1000ビットコインの取得を掲げた後、8月下旬以降に株価が約6割下落しています。

JPXは公式コメントとして、暗号資産投資や保有を一律に禁止するルールは設けていない一方で、リスクやガバナンスに懸念がある企業については、株主・投資家保護の観点から個別に対応しているとしています。

アジア各国取引所の規制強化と日本の立ち位置

アジア太平洋地域では、香港取引所(HKEX)をはじめとする主要取引所が、暗号資産トレジャリー企業の新規上場やビジネス転換に慎重な姿勢を強めています。香港では、財務戦略として大量の暗号資産保有を掲げる企業の計画に対し、「流動性資産の大量保有を制限する規定」を根拠に異議を唱えるケースも出ています。

一方で、日本市場はこれまで比較的寛容なスタンスを取ってきました。ビットコイン保有を公表している上場企業は少なくとも14社にのぼり、アジアで最も多い水準とされています。

しかし、こうした企業の株価が2025年夏以降軒並み下落したことから、日本も規制強化の流れに追随せざるを得ない状況になりつつあります。今回のJPXによる検討は、その第一歩と見ることができます。

「資金調達能力の制限」という新たなリスク

報道によれば、2025年9月以降、日本の上場企業3社がJPXの意向を受けて暗号資産購入計画を保留したとされています。暗号資産を大量保有する方向に舵を切る場合、今後は資金調達能力が制限される可能性がある、と伝えられたためです。

つまり、企業にとっては「暗号資産トレジャリー戦略」を取ること自体が、株式市場での評価や将来の資金調達能力を損なうリスクになりつつあります。これは、経営側にとっても、株主・投資家にとっても、無視できない大きなシグナルと言えるでしょう。

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メタプラネット・コンヴァノ・Bitcoin Japan—現状とリスク

メタプラネット:ホテル事業から世界有数のビットコイントレジャリーへ

メタプラネットは、もともとホテル開発・運営を手がけていた企業ですが、2024年初頭からビットコイン投資・保有を中核とするビジネスモデルへと大きく舵を切りました。

その結果、同社は2025年時点で3万BTC超(約30,823BTC)を保有する世界有数のビットコイントレジャリー企業となっています。これにより、保有規模ではMicroStrategyなどに次ぐ世界上位4社の一角に入ったとされます。

さらに同社は、2027年末までに21万BTC(ビットコインの総供給量の約1%)の取得を目指す計画を打ち出しており、2026年末までの中間目標として10万BTCの保有を掲げています。

この強気なビットコイン戦略が投資家の期待を集め、株価は2023〜2024年にかけて大きく上昇しました。しかし、ビットコイン相場が一服し、さらに株式による大規模な資金調達計画が嫌気されたことで、2025年夏以降は株価が急落。年初からの急騰分をほぼ吐き出す形となり、JPXの警戒感を強める要因となりました。

コンヴァノ:2万1000BTC取得構想と株価下落

ネイルサロン運営で知られるコンヴァノも、暗号資産トレジャリー戦略への転換を表明した企業の一つです。同社は将来的に最大2万1000BTCの取得を目指すと公表し、市場の注目を集めました。

しかし、ビットコイン相場の不安定さや、既存事業とのシナジーが見えにくいことへの懸念から、2025年8月下旬以降の株価は約6割下落。メタプラネット同様、短期間に急騰と急落を繰り返す「ボラティリティの高さ」が問題視されています。

Bitcoin Japanなどその他関連銘柄への波及

暗号資産トレジャリー企業に対するJPXのスタンス変化は、メタプラネットやコンヴァノだけでなく、Bitcoin Japanなど他の関連企業の株価にも波及しています。2025年11月13日の東京市場では、メタプラネットが一時8.7%安、コンヴァノが一時17%安、Bitcoin Japanも一時12%安と、同時に大きな下げを記録しました。

このように、暗号資産トレジャリー関連銘柄はまとめて売られやすいセクターであり、個別企業のニュースだけでなく、JPXの方針や海外規制の報道などマクロな要因でも大きく振らされる点に注意が必要です。

暗号資産トレジャリー銘柄—主なリスクと今後のシナリオ

1. ビットコイン価格に大きく依存する事業構造

暗号資産トレジャリー企業の最大の特徴は、企業価値や株価がビットコイン価格に強く依存する点です。ビットコイン相場が上昇している局面では、保有資産の含み益が膨らみ、株価も押し上げられますが、相場が反転した場合には一転して含み損が膨らみ、株価も急落しやすくなります。

本業のキャッシュフローでリスクを吸収できる一般企業と比べると、「ビットコイン価格の変動=企業価値の変動」になりやすい構造であることを理解しておく必要があります。

2. ガバナンス・情報開示の難しさ

ビットコインなど暗号資産の保有は、ウォレット管理やセキュリティ対策、会計処理など高度な専門性を必要とします。第三者による監査や情報開示のあり方もまだ模索段階にあり、JPXが「新たな監査義務」を検討しているのもこの点への懸念が背景にあります。

もし情報開示が不十分なままビットコイン保有額やリスク管理状況が市場に正しく伝わらない場合、投資家は意図しないリスクを抱え込む可能性があります。

3. 資金調達への制約と希薄化リスク

メタプラネットは、巨額のビットコイン購入資金を確保するために、大規模な新株予約権発行や海外公募増資を相次いで発表してきました。

このような手法はビットコイン購入余力を高める一方で、既存株主の持ち分希薄化リスクを高める側面があります。また、今後JPXが暗号資産トレジャリー企業に対して資金調達面のルールを厳格化した場合、新たなビットコイン購入の原資確保が難しくなる可能性もあります。

4. 規制環境の変化リスク

現在、日本では暗号資産トレジャリー企業に対する明確な専用規制は存在しませんが、今後は上場審査や開示義務、資本政策などの面で、事実上の規制強化が進む可能性があります。

特に、他のアジア主要取引所がすでに慎重姿勢を強めていることを踏まえると、日本だけが従来通りの緩やかなスタンスを維持するとは考えにくく、ルール変更によってビジネスモデル自体が見直しを迫られるリスクも織り込んでおく必要があります。

5. 想定される今後の3つのシナリオ

シナリオA

段階的な規制強化+ビットコイン相場の安定

JPXが監査や開示ルールを強化しつつ、ビットコイン相場が比較的落ち着いたレンジで推移するパターン。暗号資産トレジャリー企業は「ハイリスク成長株」として一定のニッチを維持しますが、投機的な過熱は抑えられる可能性があります。

シナリオB

急激な規制強化+相場下落

ビットコイン価格が大きく調整するタイミングで規制が一気に強化された場合、暗号資産トレジャリー銘柄が二重のショックに見舞われ、大幅な株価調整となるリスクがあります。

シナリオC

明確なルール整備+長期的な成長

上場基準や開示ルールが整備され、市場参加者もリスクを理解した上で投資する環境が整えば、暗号資産トレジャリー企業は、「高リスクだが透明性の高い新しい資産クラス」として位置づけられる可能性もあります。

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暗号資産トレジャリー銘柄にどう向き合うか 個人投資家の5つの対策

1. 「事業」ではなく「ビットコインのレバレッジ」と割り切る

暗号資産トレジャリー企業の多くは、本業収益よりもビットコイン保有額が企業価値を左右します。そのため、これらの銘柄を購入することは、実質的にビットコインへのレバレッジ投資に近い行為だと認識しておきましょう。「通常の株式」と同じ感覚で長期保有するのではなく、リスク許容度を踏まえてポジションサイズを小さくするなどの工夫が必要です。

2. 自分の資産全体に占める割合を明確に決める

暗号資産や暗号資産トレジャリー銘柄は、一般的に資産全体の数%〜10%程度に抑えるべき高リスク資産とされます。自分の総資産額を把握した上で、「この銘柄群には最大◯%まで」と上限を決めておくことが重要です。

3. 決算資料・IR情報・ビットコイン保有量を必ずチェック

暗号資産トレジャリー企業に投資する場合、四半期ごとの決算説明資料や、ビットコイン保有状況を示すIR資料は必ず確認しましょう。どの価格帯でどれくらい購入しているのか、今後の調達方法や購入計画はどうなっているのか、希薄化リスクはどの程度か、といった情報はすべて投資判断の材料になります。

4. 「ニュースリスク」を前提に分散・損切りルールを用意

JPXによる制度変更や海外規制、ビットコイン相場の急変など、ニュース一つで株価が数十%動く可能性があるのが暗号資産トレジャリー銘柄です。あらかじめ「◯%下落したら売却する」「このニュースが出たら一部を利益確定する」といったルールを決めておきましょう。

5. まずはビットコインそのものの仕組みを理解する

そもそもビットコインやブロックチェーンの仕組み、半減期やマイニング報酬、規制動向などを理解していないと、暗号資産トレジャリー企業のリスクも正しく評価できません。個別株に投資する前に、ビットコインそのものを学ぶことが重要です。


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【Check Point!】JPXの動きは「警告」サイン—情報武装して冷静な判断を

日本取引所グループ(JPX)が暗号資産トレジャリー企業に対する規制強化を検討していることは、「暗号資産トレジャリー銘柄は、従来の株式とは異なる高リスク商品である」という、重要なメッセージでもあります。

メタプラネットやコンヴァノをはじめとする関連企業は、ビットコイン上昇局面で大きなリターンをもたらす一方、相場の反転や規制強化のニュースで急落する可能性が常につきまといます。投資するかどうかを判断する際には、ビットコインそのものの理解、企業のビジネスモデル、資金調達方法、規制環境など、多角的な視点でリスクをチェックすることが不可欠です。

暗号資産トレジャリー銘柄は、うまく付き合えばポートフォリオにスパイスを加える存在になり得ますが、全資産を委ねるような対象ではないという前提を忘れないようにしましょう。


出典|参考リンク

※本記事の内容は上記公開情報をもとに執筆しており、将来の価格や投資成果を保証するものではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。

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